プロジェクト概要
国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)事業に大越慎一教授(事業統括)が提案した「グリーントランスフォーメーション(GX)を先導する高度人材育成」プロジェクト(以下SPRING GXと呼称します)が2021年秋に採択され、開始いたしました。全学の博士課程学生(4年制博士課程学生を含む)約1200名が参加するプロジェクトです。
(1) 博士課程学生支援プロジェクトの目的及び内容
東京大学のすべてのアセットを投入し、グリーントランスフォーメーション(GX)(※)実現に向けて活躍する人材をあらゆる分野に規模感(博士課程全体で1200名程度)をもって輩出する。深い専門性と高い研究力を持つ学生が好奇心をもって自由に挑戦的・創発的研究をする環境の中で、学生自身がGXが社会の将来ビジョンの全体像そのものであることを理解し、自らの研究が社会課題に関連することに対する“気づき”の場の提供、及び社会において専門的能力を十分に発揮するためのトランスファラブルスキルの養成を行う。そのために、3つの基幹プログラムと高度スキル養成プログラムを開発し、学生支援環境を高いポータビリティを担保して整備する。学生選抜は、自らの研究をGXに位置づける意思、専門性、博士研究の創発性もしくはその可能性の観点から統括が運営委員会の補佐のもとで行う。選抜には、国立研究所や民間企業等の有識者も招き、透明性を確保する。
(2) キャリア開発・育成コンテンツ
基幹プログラムと高度スキル養成プログラムを提供する。前者は、GXに関する俯瞰講義、分野を超えた学生達同士の交流を通じて自らの研究とGXの関係を見出していくグリーン未来交流会、そして様々な分野の最先端研究とGXの関わりを気づかせるGXインスパイア講義の3つのプログラムからなる。これら基幹プログラムを通じて、個々の学生がGXの種を自らの意識に埋め込む。高度スキル養成プログラムは、海外派遣・産学連携・トランスファラブルスキル習得支援よりなる。東京大学国際卓越大学院事業で実績を積み重ねてきた分野横断プログラムの教育コンテンツをさらに発展させ、約1200人の参加学生に対して、個々の専門性・事情に合わせた多様なプログラムを提供し、将来社会において、GX人材として専門的な能力をいかなる分野においても存分に発揮しうる能力を身につけさせる。並行して博士課程学生が自由に挑戦的・融合的な創発研究を行うための環境整備を行う。
(3) 事業統括
事業統括は基礎科学(化学)分野において世界的に顕著な業績を挙げてきた。その知見をベースに、エネルギー問題やIoT社会に資する材料として、ありふれた元素からなる長期蓄熱セラミックス(λ-Ti3O5)や高性能フェライト磁石(ε-Fe2O3)などを発見し、英BBC、仏AFP通信、英Economistに報道されているのに加え、ε-Fe2O3は英国立ロンドン科学博物館(Science Museum London)にも特別展示されている。また、産業界からも注目を集めており、既に一部は実用化している。21世紀COE、東大GCOE、リーディング大学院を経て、現在、東大グローバルサイエンス国際卓越大学院コース(GSGC)の統括を務めており、高い評価を受けている。組織横断的な取組みとして、東京大学初となる博士後期課程ダブル・ディグリー(東大Double Degree)を提唱し、プログラムの実施を実現した。現在、フランスCNRS国際共同研究所ディレクターとして大型共同研究プロジェクトを率いるとともに、海外大学との共同研究は13カ国にわたり共著論文は100編を超えている。
事業統括の資質能力に関する詳細
博士後期課程学生は、我が国の科学技術・イノベーションの将来を担う存在であるが、近年、「博士課程に進学すると生活の経済的見通しが立たない」「博士課程修了後の就職が心配である」等の理由により、修士課程から博士後期課程への進学者数及び進学率がいずれも減少傾向にあるなど、危機的な状況が指摘されている。すなわち、①我が国の科学技術・イノベーションの将来を担う優秀な志ある博士後期課程学生への経済的支援を強化し、②博士人材が幅広く活躍するための多様なキャリアパスの整備を進めることに、一刻の猶予もなくなりつつある。本事業は、博士後期課程学生の育成に関する確固たる独自の構想と、既存の枠組みを越えた優秀な博士後期課程学生の選抜、並びに当該博士後期課程学生が主体的に自らの研究を行い得る研究環境及び多様なキャリアパスの形成に向けた支援の提供を、それぞれ確実に実施し得る知見と能力を有する事業統括(事業統括は1大学につき1名)を厳正な審査の上で選定するものである。なお、これらの取組を円滑に実施するため、事業統括は、自身の業務遂行を支える運営チームを運用する。また、本事業全体の有効性についても客観的な把握を行い、十分な成果が挙げられるよう、不断の見直しを行う。
東京大学の理念・方針との一貫性、特徴・独自性、戦略性
地球規模の課題を解決するためには、全分野にわたる多種多様な問題と対峙し、それを解決しなければならない!
東京大学の理念・方針である、(i)人類の共有財産としての地球システムの管理、 (ii)カーボンニュートラルの実現への貢献、 (iii)デジタルトランスフォーメーションの推進、 (iv)ダイバーシティー研究、と合致している。特徴・独自性としては、グリーントランスフォーメーションを「社会の変革」と位置付けている点であり、対象とする学問分野は、人類の営みと関係する分野、すなわち全分野にわたる。また、戦略としては、規模感を持ったプロジェクトとして推進し、人材を社会のあらゆる分野に輩出する。
(人文・社会系に関して) 人文・社会系の学生の参画は必須です。